休日に家で過ごしている時は平気なのに、平日の通勤時など外出中に決まってお腹が痛くなる…。病院で検査をして何も異常がないのにこうした症状が続く場合、「過敏性腸症候群」の可能性が考えられます。直接命に関わることはまれですが、こんな状態が長く続くのは辛いもの。外出先での突然の腹痛への対処法や、出発前からできる対策についてご紹介します。

※トップ画像：
© polkadot – Fotolia.com　https://jp.fotolia.com/id/116921522

ストレスや緊張などの精神状態が影響

© yoshidaakiko1223 – Fotolia.com　https://jp.fotolia.com/id/130574902

まず、外出先で突然腹痛に襲われたり、大事なイベントや仕事の直前で緊張が高まった時にお腹が痛くなってトイレに駆け込んだり…といったことがたびたび起こったら、一度医師の診断を受けることをおすすめします。

検査をして大腸がんや腸閉塞といった重大な病気の可能性が見つからなくても、緊張が高まった時に下痢や腹痛、便秘などの症状が繰り返される場合、過敏性腸症候群の疑いが強まります。

その過敏性腸症候群を引き起こす要因には、ストレスが大きく関わっているといわれています。腸は自分の意思ではなく自律神経で働いている器官ですが、脳と腸の神経は密接な関係があるといわれており、脳にストレスがかかると腸の働きに影響し、下痢や便秘などの症状を引き起こすと考えられています。

過敏性腸症候群になりやすいのはこんな人
主に考えられる原因がストレスということもあって、過敏性腸症候群になりやすい人は、ストレスを感じやすい傾向の人が多いと考えられます。

一般的に、真面目で仕事に一生懸命で、他人の評価が気になって落ち込みやすかったり、自分の気持ちを押し殺してしまう方は、ストレスをため込みやすい傾向があります。
また、仕事に一生懸命なあまり、十分に睡眠が取れなかったり、日々の食事が不規則だったり栄養に偏りがあったりすると、やはりお腹の調子に影響を与える可能性が高まります。

外出先で突然お腹が痛くなった場合にできることは？

大事な仕事や外出の用事などで毎回、お腹が痛くなってトイレを探して焦ったり、思うようなパフォーマンスを発揮できなかったりということが続くと、もはや生活に支障をきたすレベルに至るかも知れませんし、生きる気力も弱ってきてしまいます。

心身の状態の悪化がさらなるストレスを呼び込んでお腹の状態を悪化させる…といった悪循環を避けるために、過敏性腸症候群に上手に対処することが必要です。

「もしもの時」のための薬を携帯する

© tamayura39 – Fotolia.com　https://jp.fotolia.com/id/132655399

緊張すると下痢になりやすい人、便秘になりやすい人など、過敏性腸症候群の症状には個人差があります。「もしもの時」に症状をすみやかに緩和してくれる薬を携帯して出かけると、本当にお腹が痛くなった時に対処が可能ですし、そうした手段を持っているという安心感から、精神状態も安定させる効果が期待できます。

但し、どんな薬を持ち歩くかについては、医師の診察を受けたうえで相談するようにしましょう。

身体を冷やさないための用意をする
身体、特にお腹が冷えている状態は、腹痛が起こりやすい条件の一つです。夏場でも、エアコンの効いた電車やオフィスなどはお腹が冷えやすい環境といえます。

少し荷物になりますが、お腹をカバーできる程度の大きさのブランケットを持ち歩き、腹痛の前兆が感じられたり、室温が低くお腹が冷えやすいな…と思った時にすぐにかけて温めてあげる、という方法があります。

男性の場合は、人目のある場所でブランケットを使うのに抵抗があるかも知れません。そこでおすすめなのが「腹巻き」です。

現在では、腹巻きのカラーバリエーションも豊富ですし、薄手で通気性・保温性も高く、コーディネートの邪魔をしないという優れものの製品もたくさんありますので、夏場でもエアコンの効いた部屋では大活躍してくれます。

いずれも、お腹を温めるという効果とあわせて、安心感にもつながって症状を和らげる効果が期待できますので、使ったことのない方はぜひ一度試してみていただきたいと思います。

お出かけ前にできる対策は？

さて、お出かけ中の非常事態以外に、普段から準備できる対策もあります。
大きなポイントは、精神が受けるストレスを遠ざけ、腸への負担を減らすのに最適な生活習慣を心がけることです。

普段からストレスを遠ざける工夫を

© beeboys – Fotolia.com　https://jp.fotolia.com/id/151221625

比較的ストレスを感じない休日や家でのひとときには、意識的に散歩などの運動をして心身をリフレッシュさせるようにしましょう。無理のない適度な運動は気分転換やストレスの軽減、そして腸の働きの改善にも効果があると考えられています。

可能ならば周りの人の理解を得ておく

仕事のイベントや飲み会などの度に緊張して腹痛が起こってしまう場合、可能であれば周りの人に事情を説明して理解を得ることで、いざという時の焦りやストレスを軽減できます。お腹が弱いことを隠して仕事をしていると、症状が出た時の周りの視線や心配の声に、さらなるストレスを感じてしまう可能性があります。

以前筆者がイベントの仕事でご一緒した人で、「自分は緊張するとお腹が痛くなる体質なんです」と話している方がいました。その方はイベントの開始時間が近づくと必ずトイレを済ませて帰っくるのですが、本番でも問題なくパフォーマンスを発揮していて、緊張に弱いという話が嘘のように感じられたものです。

おそらくその方は、自分の体質をよく分かっていて、ストレスを上手にコントロールする工夫をされていたのだと思います。

快適なトイレの場所を把握するなどの準備も

また、駅や仕事先などで腹痛に襲われた時に困るのが、トイレがなかなか見つからなかったり、トイレが混雑していて使えない…という事態です。

通勤ルートにある駅や施設などのトイレや、仕事場で安心して利用できるトイレなど、自分にとって快適な場所を事前に調査して把握しておくと、お腹が痛くなった時にどのくらいの距離・時間でトイレにたどり着けるかが読めますし、トイレが混雑している場合でも第2候補のトイレにすぐ向かうことができます。地味ではありますが、お腹が辛くなったときに効いてくる事前準備だと思います。

胃腸に負担をかけない、規則正しい食生活を

精神的なストレスに対処すると同時に、胃腸にかかるストレスも見直してみましょう。
例えば、普段から消化のいいものを食べるようにし、食べる量も控えめに。暑い日でも冷たい飲み物を避けて、常温あるいは温かい飲み物を選ぶなど、腸に与える刺激や負担を減らしてあげましょう。

また、夜は21時以降には何も食べないようにし、しっかり睡眠をとって規則正しい生活習慣にすることで、胃腸を元気な状態を保つことにつながります。これは仕事などが忙しいとなかなか実現が難しいかも知れませんが、一つひとつできるところから生活習慣を改善していくことで、効果を実感する瞬間が増えてくるはずです。

心と身体にかかるストレスを遠ざけ、心身の状態を安定させる工夫を続けることで、突然の腹痛に対処できるのはもちろん、気持ちの上でも前向きになれるかも知れません。過敏性腸症候群と診断されても落ち込まないで、専門家のアドバイスも受けながら適切な対応をとりつつ向き合っていっていただきたいと思います。